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治療が開始された時期と雑誌掲載の時期が2年半もズレているのは、プライバシー保護のために子供たちの名前が伏せられていたことによる。
開始から11年以上が経過して医師団が治療の効果を確信したことから、それぞれの親の了解のもとに実名や写真が公開され、病気治療の経過なども公表された。 これらをもとに『タイム』誌が取材し、遺伝子治療第1号の結果として特集したのが、この「新しい遺伝子をもった最初の子供たち」である。

こうして、″欠陥のある遺伝子に代わる新しい遺伝子を入れる″遺伝子治療の第1号は、上々のスタートを切ることができた。 そして、新しい遺伝子を入れれば治るはずのさまざまな病気に関する研究や実験が、あっというまに世界中で盛り上がりを見せるようになった。
日本でも北大のケースをはじめとして、ガンやエイズを対象にした臨床実験の予定が相次いで発表された。 いったい遺伝子治療とは何なのか、従来の医療とどこが違うのか、なぜ画期的な医療といわれるのか。
ADA欠損症の原因と治療法を具体例として解いていくと、これらの疑問点が明らかになるであろう。 このリンパ球の活動や製造に欠かせない物質の1つがアデノシン・デアミナーゼ(ADA)という酵素で、一種の触媒として主に免疫細胞の代謝にかかわっているタンパク質である。
この酵素は生命活動に必須な体内物質なので、人がもって生まれてくる遺伝子群のなかに″ADAの作りかた遺伝子″が含まれている。 このADA遺伝子の働きによってリンパ球のなかでADA酵素が作られ、リンパ球そのものの活動や再生産が可能になる。
もしADA遺伝子に何らかの設計ミスや配列ミスがあると、タンパク質を作るための遺伝情報に狂いが生まれて、ADA酵素の生産能力が標準を大きく下回ったり、ADA酵素が作られなくなる可能性がある。 すると、細胞の代謝がうまく進まなくなって不要物質が蓄積したままになり、新しいリンパ球の生産・増殖を妨げてしまう。
生み出されるリンパ球の数が少なければ血液中のリンパ球の密度も下がり、異物を排除する免疫システムとしての能力も期待できなくなってくる。 いわゆる重度複合免疫不全症として、いつ重い感染症にかかって命を落とすことになるか、つねにおびえていなければならない。

いまでは、ウシのADAから加工合成される酵素薬を注射して、1時的にリンパ球の濃度を保つことはできる。 しかし、そのリンパ球の寿命がつきた時点で効果も終わる。

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